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ボールねじの寿命とは②

あらゆる機械要素にはさまざまな単位(時間、距離、回数)で寿命が定義されています。
ボールねじの寿命は総回転数で定義され、仕様検討を容易にするために総運転時間や走行距離などに換算して使用しています。

 では、寿命計算で得られた寿命は、どの程度信じてよいのでしょうか?
定義から言えば90%定格寿命という言葉がそれに該当しますが、この寿命には、
「ごみや異物がなく環境や潤滑の劣化が無いこと、理想の取付状態(取付誤差の無いこと)で使用されることを条件とした場合」といった前書きがついています。

 そこで今回は、「ボールねじの寿命を最大限活用して頂くために」という内容で設計上の観点、使用組付け上の観点、潤滑での観点での重要度の高い項目について説明していきます。

設計上の観点

①ごみや異物からボールねじを守る

 ボールねじはねじ軸とナットのねじ溝の間をボールが転がることで仕事をしますので、硬い砂粒や鉄粉の様な異物をかみ込んだ場合は、ねじ溝やボールの表面にかみ込み傷や圧痕が生じる場合があります。
その損傷を起点に早期にねじ溝やボールの剥離が進行してしまいます。
また、おが屑や小麦粉などの粉体は、グリースや作動油などの潤滑剤に粉体が混ざることより、その潤滑剤の性能を著しく低下させ油膜の形成を阻害することで焼付きや作動不具合を起こすことがあります。
 ボールねじには、ワイパ装置を備えるものもありますが、単体での完全な防御は難しいため、ボールねじ以外の機構、例えばカバーやジャバラ等でボールねじ全体を覆う必要があります。

②ボールねじに偏荷重が働かないようにする
 ボールねじは、アキシアル荷重(軸方向荷重)に対して仕事をする機械要素ですので、ラジアル荷重やモーメント荷重を受けることはできません。
仮にこれらの荷重が働いてしまうと、一部のボールやねじ溝に負荷が集中することで大きく寿命を低下させることになります。

使用組付け上の観点

①組付け精度は非常に重要

 ボールねじ軸、軸受、直動案内(ガイド)、ナットおよびナットハウジングの相互の心出し不良や直角度不良は、本来受けることのできないモーメント荷重をボールねじにかけてしまう原因となります。
そしてその代償として作動不良、異常音や振動の発生、早期の寿命低下の原因となる他に回転曲げ疲労によるねじ軸の折損など、重大事故につながる恐れがありますので注意が必要です。

②使用温度限界内で使用する。
 一般的環境で使用するボールねじは、循環部品の固定に接着剤やワイパ装置に樹脂等を使用している場合がありますので通常60℃以下としています。
また、接着剤や樹脂を使用しない場合でも寿命計算の基となる定格荷重は、焼入れした部材が硬度低下をおこさない100℃以下とされていますので、100℃を超える場合については、硬度低下による寿命低下のある場合があり注意が必要です。

潤滑での観点

①潤滑剤は必要不可欠
 ボールねじは、鋼製のねじ軸とナットの間を鋼製のボールが循環するわけですから、金属同士の直接接触を避けるために潤滑が必要不可欠です。
もし、給油(給脂ともいいます)を怠った場合は、金属同士の接触を防ぐ油膜の形成がありませんので、ねじ溝とボールが直接接触し焼付きが起こり使用不能となります。
ボールねじに限らず転がりやすべりを伴う機械要素は、こまめなメンテナンスや潤滑ユニットを使用し、ボールとねじ溝の間に介在する油膜を切らさないようにしなければなりません。

②仕様にあった潤滑剤の選択
 ボールねじに使用する潤滑剤は、その仕様にあった潤滑剤の選択が必要となります。
例えば防錆油を塗布してボールねじが使用できるかと言うと、防錆油は錆を防ぐための油膜はできるものの、ボールねじのように転がりやすべりを伴う動きでの油膜形成が難しく、それ自体を作動油として使用することはできません。
適材、適所での潤滑剤の選定は、ボールねじの寿命を最大限活用する上で重要となります。
その内容は『ボールねじにとって潤滑の目的は?』に詳しく説明しておりますのでそちらもご参照ください。

 ここに示した内容の他、ボールねじを安全にお使いいただくための注意事項は当社ボールねじ総合カタログにも掲載しております。ご使用前には必ずお読みください。

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